HOME ぴよぴよ 7ページ > 小眼科學「色神」  第一異常と第二異常の違い  1.  2.  3.  アノマロスコープについて

7-1 小 眼 科 學 「 色 神 」部 分 の 転 載

片仮名部分を平仮名に変えて「小眼科学」の「色神」の箇所を転載します。脚注は括弧の中に(一部省略有り)、漢字部分はできる限り、原文に忠実にしましたが、その限りではありません。  (※ 文中の色見本は、参考として付けたものです。)
改訂第4版 「 小 眼 科 學 」  東京帝國大學教授 医学博士  石原 忍  株式会社 金原商店 昭和9年(1934年)発行
V 色 神
  1. 色神の障碍には先天性と後天性とあり。先天性障碍は色神の発育不全によりて起こり。後天性障碍とは全く別種のものなり。
  2. 色神(Sensus chromaticus)は網膜円錐体の機能なるを以て視力と同様に視野の中心部が最も佳良にして、周辺部に至るに従いて不良となる。
  3. 諸種の眼疾患により色視野に異常を呈し、部分的に又は全視野に色神の減退又は消失を来すことあり。一般に視神経の疾患には及びの色神が強く障碍せられ、網膜脈絡膜の疾患には及びの色神が比較的強く侵さる。
  4. 後天色神障碍とは色視野の狭窄(きょうさく)、缺損又は暗點を言ふものにして、絶対暗點は色盲に、比較暗點は色弱に相当す。
  5. 先天色神障碍は殆ど常に両眼に来り。色神の全く缺損せる全色盲(Achromatopsia)と、色神の総てが減弱せる全色弱(Dyschromatopsia s.Trichromasia anomalis)と、の色神が欠損しての色神が健常なる赤緑色盲とこの軽度なる赤緑色弱とあり。
    赤緑色盲及び赤緑色弱は、更に各々、二つの型に分類せられ赤色盲(第一色盲Protanopia)と緑色盲(第二色盲Deuteranopia)と赤色弱(第一色弱Protanomalia)と緑色弱(第二色弱Deuteranomalia)となる。[58]
  6. 色神異常の本態に関しては、ヘルムホルツ(Helmholtz)氏、三要素説(Drei-Komponenten-Theorie)最も真に近し。即ち色神の基礎的機転として三種の要素の存在を推定す。
    その第一要素は、スペクトルの長波長()部に於いて、第二要素は、中波長()部に於いて、第三要素は、短波長()部に於いて興奮の度、最も強し。
    これ等の要素の興奮する割合の種々異なるに応じて種々の色を感ず。しかして赤色盲はこの第一要素の缺如せるもの。緑色盲は第二要素の缺如せるもの。赤色弱及び緑色弱は夫々第一要素及び第二要素の機能異常なるものとすれば、之によりて色神異常者の示す症状を最も都合よく説明することを得べし。
  7. 色神の発育に関してフランクリン(Ladd-Franklin)氏の仮定説によれば、色神は無色に始まり、発育して三原色を感ずるに至るまでに次の如き順序をものの如し。(右図参照)この発育が中途に於いて停止すれば前記の如き各種の色神障碍を生ずべし。
    → 発 育
     (青) (青)
    無色< (緑)
      (黄)<
        (赤)
         
    全色盲赤緑色盲健常色神
  8. 全色盲は、甚だ稀なる異常にして全く色を感ずることなく、外界を見ること、あたかも、我等が写真を見るが如く唯、明暗濃淡を感ずるのみなり。且つ色は、明るく、色は暗く見え、弱視ありて視力通常約0.1に減弱し、明所に於いては昼盲(Nyctalopia明所に於いて視力の減退するを言う。)並みに羞明(Photophobia強き光に対して過敏にして不快を感ずるを言い、視力には無関係なり)(清水真氏)ありてまぶたを細くし、且つ眼球震動(Nystagmus)あり。両親の血族結婚なること多し。
    (全色盲者はまぶたを狭小にして光線の眼内に進入するを制限するにより明所に於いても視力減退せざる如く見ゆれどもまぶたを開大せしむれば明所に於いては視力著しく不良となる。)(清水真氏)
  9. 全色盲の網膜は円錐体の機能を缺き桿状体の機能のみ存在するものなるべし。…尚、健常者が全色盲者と共に暗室に入り、その目を暗調応状態となせば両者の眼は殆ど全く同様の状態となることにより全色盲が暗調応眼に外ならざることを知る。
  10. 全色弱もまた稀なる異常にして赤緑色神と共に青黄色神もまた減弱し、その他に何等、眼の異常を呈せざるものなり。
  11. 赤緑色盲と赤緑色弱との境界は明瞭ならず。故に、この両者を総称して赤緑異常と言うことあり。
    赤緑異常は色神障碍中、最も多くして総ての男子の約4.5%を占む。女子は少なくして男子の10分の1以下なり。(色神異常者の数は人種によりて異なり、白人種に多く約8%、黒人種に少なし約3%)(Garth氏)
  12. 赤緑異常者は赤緑色神が減弱し青黄色神が健常なるものにして色神の他に何等、眼の障碍を認めず。而して赤色異常と緑色異常との別は前者に於いては色と、その補色なる帯青緑とが無色に見え、後者に於いては色と其の補色なる帯紫赤色とが無色に見ゆるに在り。
    従って赤色異常者には、スペクトルの端が短縮して見ゆれども緑色異常者にはこのことなし。
  13. 赤緑異常者は色とを区別すること困難にして、これが為に葉と葉とを誤り、又果実の熟したるものと未熟のものとを区別の難きことあり。しかれども、その障碍が先天性なるを以て患者これを自覚せず。検査によりて始めて発見せらること多し。
  14. 赤緑異常には遺伝的関係あり。しかして女子には本病の現ること少なきを以て本病が健常に見ゆる所の女子によりてその男児に遺伝することあり。(性結合劣性遺伝)(図は省略)
  15. 先天色神障碍の検査法は種々あれども、その簡便にして正確なる点に於いて石原式色盲検査表の右に出ずるものなし。(第14回国際眼科学会(1933年)に於いて身体検査の際に於ける色神検査にはなるべくスチルリングStilling氏 仮性同色表Pseudo-isochromatische Tafelnと石原氏色盲検査表Isihara's Tests for Colour-blindnessとを使用すべきことが決定せられたり。)
    色神の精密なる検査にはナーゲルNagel氏アノマロスコープAnomaloscopeを用いる。
  16. 色盲の反対に無色の物体に著色して見ゆることあり。これを色視症Chromopsiaと言う。例えば強き光線を受けたる後に起こる赤視症Erythropsia.サントニン中毒の際に起こる黄視症Xanthopsia.白内障手術後に起こる青視症Cyanopsiaの如し。(人の水晶体は別図(省略)の如く黄色なり。故に白内障等にて水晶体を摘出したる後には青視症起る。)

※「小眼科学」の中での色覚理論は、石原式色覚検査表序文のものとはだいぶ様子が異なり、主に外国研究者の学説からの引用で「石原説」は色覚の発育過程を図によって示したもののみとなっています。しかし、色覚異常に関する石原先生の医師としての経験的記述は大変興味深いものがあります。
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7-2 第 一 異 常 と 第 二 異 常 の 違 い

 目 次  1. 違 い を 考 察2. 文 献 の 引 用3. 石 原 表 に よ る 分 類

1. 違 い を 考 察
色覚異常は、色に鈍感な「第一異常」と、色に鈍感な「第二異常」とに区分されています。(医学書、専門書、眼科での検査など) しかし、色盲(二色型)と色弱(三色型)との分類が曖昧であるのと同様に、第一異常(異常)、第二異常(異常)の区分も極めて不明瞭と考えられます。医師より、「第一異常です、第二異常です」と診断されたとしても、現実生活の中では、様々な色彩の中での生活になるわけですので、殆ど、本人自身もピント来ないというのが実際ではないかと思います。

医学的検査では、小眼科学(58)にも有るように、スペクトルの色端が暗くなるケースをもって第一異常、そうはならないものを第二異常としている様です。第一異常は、自動車のテールランプのが暗くて見えないなどの色の誤認が多いことを考えると強度異常の場合が多く、第二異常には、なぜか?スペクトルの部分が暗くなるという事が無いことからも、弱度異常なのではないかと思えます。

「石原説」から考えると、の感知部はからの分化によってできた同一神経の別領域、あるいは別機能(+、−)花のようなものと考えられ、もともと厳密な区分ができない仕組みであると思えます…。また、強度異常には第一異常、弱度異常には第二異常が多い傾向にあるのは、を感ずる(同一)神経がそのような特性を持っているからと考えるべきではないでしょうか?
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2. 文 献 の 引 用
参考までに、第一異常、第二異常を区分した色の見え方の違いをまとめた資料がありましたので、転載させていただきます。
 第一異常(赤色盲、赤色弱)と判定された人の色彩感覚 第二異常(緑色盲、緑色弱)と判定された人の色彩感覚
・緑の森につつまれた赤鳥居が見えにくい。・冷や麦の中に入っている緑色の麺が灰色にしか見えなかった。
・イチゴ採りに行って、近くのイチゴは採れるのに遠くのイチゴは見えない。・茶系統の色の布団が緑系統の色にしか見えなかった。
・ゴルフ場の芝生の中に飛んだティー(赤)が、どこかわからない。・古い緑色のタオルを、使い古しの赤茶けたタオルだと思った。
・爪の色が白っぽく見える。赤みがかって見えない。・コンソメスープが緑色に見える。
・ボールペンで書いた細い赤線と黒い線とが区別しにくい。・わかめが黒く見える。

須田經宇先生による「石原忍の生涯」にも、第一異常、第二異常、ともにの区別が不完全であることが記述されています。

色覚異常者の色覚の本質(第一異常、第二異常の違い)は、如何なるものであろうか。もっとも単純な方法として、太陽スペクトルをどう感じるかを調べると、ある波長を境に二種類の色相を区別し、各々の色相の間には、明るさと飽和の差を認める。この境になる波長は無彩に感じるところで、これを中性点という。これが493.5〜497.2ナノメートル(平均495.5ナノメートル)にあるものと、495.0〜506.4ナノメートル(平均500.4ナノメートル)にあるものがあり、前者を第一色盲、後者を第二色盲と区別する。しかし中性点波長は、両者で重なっている部があり、これのみによって厳密に区別することはできない。しかし第一色盲の比較感度曲線は赤端が短縮して、正常と異なる形を持つのに、第二色盲のそれは正常とほとんど異ならないので、両者の差は明らかである。
第一色盲と第二色盲はともにの区別が不完全で、両者とも、ときどき緑の葉と紅葉を見誤り、また果実の熟したものと未熟のものとを間違えることがある。しかし、上気したように、第一色盲と第二色盲は中性点の波長が異なり、また第一色盲ではスペクトルの端が短縮しており比視感度も異なっている。 (p.84〜87)

※第一異常(異常)であっても第二異常(異常)の見え方の症状を持っているし、またその逆もある事から、区分する事の意義は、現実的には学術的意義以上のものは無いと思えます…。 現代医学が主張する様に、色覚異常が、不治(見え方の個性)であるとするなら、少しでも自分の見え方の特性を知る上で、区分することに現実的な意味が全くないと否定するものでは有りませんが…。石原先生も、小眼科学の中では、区分されていますし…。

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3. 石 原 表 に よ る 分 類
石原式色覚検査表42 石原表5類(参照)は、第一異常と第二異常とを分類する表と説明されています。 右図のような、黒地にで描かれた文字( 4 )で描かれた文字( 2 )を見せ、どちらが見えやすいか、見えにくいかを被験者に問い、が見えにくい場合は赤異常(第一異常)、が見えにくい場合は緑異常(第二異常)としているようです。

石原表ではなぜ、が見えにくい場合を緑異常(第二異常)とするのか?不思議に思っていましたが、石原先生の小眼科学(58)に「赤色異常は色と、その補色なる帯青緑とが無色に見え、緑色異常は色とその補色なる紫赤色とが無色に見ゆるに在り。」との説明でその件も何となく納得出来ますが、…

石原説」から考えると、の混色であり、この表は「がよく見えてないとされる、第二異常を検出するために文字を使用している」と言うより、「の彩度の落ちている赤異常(第一異常、強度異常?)の検出を際立たせるために文字を並べて使用し、どちらを被験者が見やすい色と判断するかによって区分している」と考えた方が納得出来ます。

(赤緑異常者は、の混色の方が原色のより生えて見えている。色覚障害者用信号機の×入れるアイディアも、この事を応用したものと考えられます。 (参照)   「石原先生のご苦労の一端を伺い知る表」と考えます。)
(注)上記の表は参考として掲示したもので、検査用には使えません。 (GIFによるイメージ画像)石原式色覚検査表見本2 へ )

※国際版(コンサイス版)1980の英語解説文には、Strong(強度異常)文字が見える。 Mild(弱度異常)文字も何とか見える。 という区分で説明されていました。どちらかと言えば、こちらの解説文の方が現実的と思えます。
※個人的な、意見として、第一異常、第二異常などと区分する事以上に、の見え方との見え方に(大きな)アンバランスが有ることを、当事者にもっと説明するべきではないでしょうか?(実際の見え方以上に、旧来からの医学理論に重点を置く、現代医学に疑問を感じます。)
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7-3 ア ノ マ ロ ス コ ー プ に つ い て

アノマロスコープ アノマロスコープは、ドイツのナーゲル(Willibald Nagel 1870〜1911)が1907年に発明した色盲検査機器です。望遠鏡のような器機の接眼部からのぞくと、視野の下半分に色光(ナトリウムの単色光 589ナノメートル)が、上半分には色光(リチウムの単色光 670ナノメートル)と色(水銀の単色光 535ナノメートル)とが混色できるようになっています。(最近のものは、光源をLEDにすることで、信頼性を高めたものとなっているようです。)

視野の下半分の色光を一定にし、上半分のとを混色させ、どの数値で上下が同じ色調、明度に感じられるか(これを「レーレー(Rayleigh)均等」という。)(ジョン・レーレー1842〜1919 イギリスの物理学者)によって、色覚異常を「レーレー比」で分類する仕組みになっています。

精密検査用ではありますが、器機の操作によほど熟練していなくては、正確な判定ができないもののようで、視野が変わると同一被験者で色盲(二色型色覚)が色弱(異常三色型色覚)に変わったり、正常者の均等範囲にもある程度の幅があったりで、人間の感覚を頼りにする弱点は避けられません。器機それぞれのクセがあり、熟練者を必要とし、捜査に時間がかかるため、集団検診に用いられることは、滅多にありません。

を混色して色を作り、通常の比率よりもを多く使う場合はが弱いから「第一異常」、その逆を「第二異常」としていると思われます。 また、赤緑異常者は、レーレー比が正常者より不安定で(バラツキがあり)、強度異常になると決まったレーレー比がなくなる(の区別がなくみんなに見える?)そうです。 「石原説」から考えると、レーレー比が正常者より、不安定なのは、として見える視細胞は働いていても、を見る視細胞が発育不全によってうまく働いてないためにとして見える定点が正常者のように定まらないからと思われます。

※現代医学では、「アノマロスコープを石原式検査表ではうまく検出できない第一、第二異常の区分の為に使われる」と説明されてる事が多いですが、「石原説」とアノマロスコープの理論的な構造から考えて、「この器機は、赤緑異常をレーレー比の不安定さ(バラツキ)をもって、異常の度合い(強、中、弱度異常等)を調べることが本来の(一次の)目的ではないでしょうか?」     (尚、個人的に、この器機による検査経験は、一切ありません。)
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